エステート・プランを理解するためにはまずワシントン州のコミュニティ・プロパティ(夫婦共有財産)という仕組みを理解しなければいけません。米国でコミュニティ・プロパティという制度をとっている州は少数派で、法令で取り入れている州も合わせると2004年5月現在で10州のみで、西海岸の州が多く含まれます(ただしお隣のオレゴン州はこの制度をとっていません)。
■コミュニティ・プロパティの基本ルール
コミュニティ・プロパティの原則は、夫婦が結婚してから一緒に築いた財産は自動的に2人の共有財産になることです。従って結婚以前にそれぞれが所有していた財産は基本的に所有者のセパレート・プロパティとなり、結婚後も元々の所有者の財産とみなされます 。結婚後に入手した財産は基本的に全てコミュニティ・プロパティですが、どちらかの配偶者が相続または贈与によって入手した財産については、それを受け取った配偶者のセパレート・プロパティとなります。つまり、財産の入手方法に焦点が当てられるので、名義は重要ではありません。
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こうしてコミュニティ・プロパティとなった財産に関してはその財産管理権は夫婦の両方にあります。つまり、夫婦が50・50で所有していることになりますが、買い物に行く度に夫婦両方の合意が必要なわけではありません。しかし、この100%の管理権には法律で定められた限度が幾つかあり、1つの例を挙げると、コミュニティ・プロパティを配偶者の了承無しに贈与することはできませんし、死後に自分の遺言で配分を指定できるのは、あくまでコミュニティ・プロパティの自分に属する半分だけです。
■財産分類の変更
以上の基本ルールによって分類された財産ですが、コミュニティ・プロパティをセパレート・プロパティに、またはその逆に変更することは可能です。その方法の1つは法的な合意書にもって変更することで、これは "Property Agreement" や "Agreement As To Status of Property" などの合意書によって行います。
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もう1つの方法は分類の異なる財産を混ぜてしまうことです。これを法的には "Comingling" と呼びますが、つまり、もともとセパレート・プロパティであった財産でも、コミュニティ・プロパティと混ぜてしまい、どちらがどちらだか分からなくなってしまった場合、基本的に全てコミュニティ・プロパティとみなされます。この場合、もともとの持ち主がセパレート・プロパティを主張したい場合はどの部分がセパレートなのかを証拠を持って証明しなければなりません。これは合意書によって分類を変更する場合と違い、「うっかり混ぜてしまった」ということもありがちなので注意が必要です。
■財産分類の重要性
財産の分類は、主に離婚や死後に重要になります。離婚の際は、ワシントン州の場合、基本的にはコミュニティ・プロパティは夫婦に半分ずつ分割され、セパレート・プロパティは元の 持ち主に返却されます。しかし、これはあくまでも基本ルールであり、結果的にこれが公正かつ平等な配分にならない場合は、裁判所の裁量によって別の分配を行うことが可能です。
死後には遺言書(遺言書がない場合は法定相続)によって財産が分配されますが、その財産分配はあくまでも個人の財産について行われますので、夫婦の財産のどれだけがコミュニティ・プロパティであり、どれだけが故人のセパレート・プロパティであるかがポイントになります。また、法定相続の場合、コミュニティ・プロパティかセパレート・プロパティかによって相続人が違ってきますので、そういう意味でも財産の分類は重要です。
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また、所得税の面でも、通常故人の財産の "Tax Basis" は死亡時の価値に引き上げられるので、これを "Step−Up In Basis" と呼びますが、コミュニティ・プロパティの場合、亡くなった配偶者が所有していた財産の半分だけでなく、残された配偶者の半分にも "Tax Basis" が死亡時の価値に引き上げられるという利点があります(Double Step-Up In Basis)。
■コミュニティ・プロパティ・アグリーメント(Community Property Agreement)
エステート・プランを形成する書類の1つに、コミュニティ・プロパティ・アグリーメントがあります。これは前述の財産分類を変更する合意書の1つですが、一般的に知られているコミュニティ・プロパティ・アグリーメントとは、その合意書と遺言書を掛け合わせたもので、財産分類の変更だけでなく、死後の財産分配についても夫婦間で契約を結ぶものです。通常コミュニティ・プロパティ・アグリーメントには以下の3つの項目が含まれます。
- 合意書を作成する時点で、夫婦が所有している財産は全てコミュニティ・プロパティとする。
- 合意書の作成後、夫婦のどちらか、もしくは両方が入手した財産は全てコミュニティ・プロパティとする。
- 夫婦どちらかの死後はコミュニティ・プロパティはすべて残された配偶者の所有となる。
しかし、コミュニティ・プロパティ・アグリーメントは残された配偶者の死亡時には何の役割も果たさないので、2人が同時に亡くなる可能性や残された配偶者が遺言書を作成する前に亡くなる可能性を考えると、コミュニティ・プロパティ・アグリーメントを主なエステート・プランとして使用する場合にも、やはり遺言書が必要です。また、コミュニティ・プロパティ・アグリーメントはきわめてシンプルな契約書であり、税金対策を組み入れる余� �がないので、課税対象額以上の財産を所有している人には向いていません。しかし、財産が課税対象額以下であり、家族構成などが複雑でない夫婦にとってはコミュニティ・プロパティ・アグリーメント(そして、念のための簡単な遺言書)は効果的なエステート・プランニングのツールの1つと言えるでしょうでしょう。
(2004年6月)
= お断り =
コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関しては、お住まいの州のエステート・プランニング弁護士にご相談ください。なお、このコラムにおける法律の情報は特に明記されていない限り、掲載時のワシントン州の法律に基づいております。エステート・プランに関する法律は州によって大きく異なりますので、ご注意ください。
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